マリアとの共同研究(1)

UCLA

マリアとの共同研究

共同研究の利点と大変さについて、この記事に書いたが、
LAにきて、半年が経とうとしている現在、ありがたいことに
元アドバイザーのマリアと共同研究させてもらっている。

以前にマリアと途中まで一緒に研究して、出版までにいたらなかった
プロジェクトがいくつかある。今回のサバティカルを機に、
それらのプロジェクトを仕上げられればいいと、
密かに思っていたので、願ったりかなったりである。

LAにきて、彼女と再会してから、近所なのでよく会い、
近況報告やら雑談をもっぱらしていた。
8月2日に彼女がヨーロッパから帰ってきてから、
さすがに雑談にもあきたのか、今研究していることを
レジメ(ハンドアウト)を作って持ってこいと言われた。

だが、それは保留にし、今私がはまっているObsidianという
ノートテーキングアプリについて彼女に伝授した。
Obsidianの記事についてはこちらを参照。

共同研究1日目

共同研究するにしても、何をやるかだが、
手っ取り早く、以前一緒にやっていたプロジェクトが
ドロップボックスの共有フォルダーに残っていたので、当時
学会に提出した要旨(アブストラクト)やその時のレビュー(批評)やらを
読むところからスタートした。これが8月16日くらい。

面白いプロジェクトだし、アブストラクトも
とてもよくかけてた
わよね、とマリアもやる気になった。

そして、学会の査読委員に指摘されてた問題を見つけ、
それについて書かれている過去の参考文献を探し2人でさっと読み
軽くディスカッション。問題は一応解決。それが共同研究の1日目だ。

その後、私は1週間ユタ州の友人宅へ。その時の記事はこちら

その後の10日間

ユタ州から帰ってくると、マリアが日本人が1992年に書いた
同じテーマを扱った博士論文を見つけて読み
Obsidianで要旨をまとめた、とメールがきていた。

新しいことを学び続ける姿勢

ちなみに、彼女は私がいない1週間の間にObsidianの
コーネルノートのテンプレート(コーネル大学用の
ノートテーキング方法を採用したもの)まで、購入しており、
私の知らない裏技もいろいろ身につけていた。さすがだ。

大学院時代、若い日本人の大学院生に、私がLatexを使って
論文を書いているというと、『レイさんは、年なのに、
新しいことにチャレンジしててすごいっすよね。』と言われたのを思い出す。
マリアは70でも、好奇心旺盛で新しいことをどんどん学び、
あっという間に自分のものにするのだ。さすが、私の先生❤️

毎日、研究に没頭

話を戻そう、Obsidianとそのマリアの見つけた博士論文のお陰で、
そこから、一気に研究がすすんだ。こんなに、一日中研究に没頭したのは
博士論文を書いていた時以来ではないだろうか。

午前中にマリアの家に行き、お昼を二人で作って食べ、
夕方帰宅し夕飯を軽く食べる。その後、夜も自分で
できることをやるなどして、また研究した。

私の作った新しいデーターファイルを彼女に送り
そのデーターに関して、彼女が細かく質問、コメントを加え
送り返してきて、私がそれにまた返答し、翌日一緒に
その内容を確認する。その作業を毎日、10日間ほど行った。

寝ている時も脳が働いてるとはいったもので、
明け方に目が覚めてぼっとしていると、
次から次に例文が浮かんでくる。それを忘れないように携帯に録音し
翌日データーファイルに加えていった。

以前に取り組んだことがあるテーマだし、最近その構文に付随する
現象について読んでいたことも多少あるとは思うが、10日ほどで、
主要データーを集め終わったのだ。やればできるものだと我ながら驚く

とにかく、共同研究してみて、ものすごく楽しかった。
研究ってこんなに楽しかったんだと思い出した。
一日中隣にすわって、作業をし、論文を読み、ディスカッションをして過ごした。

大学院時代、フランス人の親友とも毎日横に座ってお互い研究をして、
合間におしゃべりをしていた。とても楽しかったし、その時を懐かしく思い出した。
私は人と一緒に勉強をするのが好きだ。違うことをやっていても、
時間と空間を共有できるのが、
とても居心地がいいのだ。

日本で、娘が大学生の頃は、近所のカフェで一緒にすわって、
それぞれの勉強をする時間も大好きだった。

今回のサバティカル中に自分のことで、よく分かったことがある。
私は人と一緒に研究することで、力が発揮できるタイプなのだ。
人の期待に応えようと思うと、ものすごくがんばれる、この性格も
功を奏しているのだろう。

共同研究における一人ひとりの貢献度の問題

共同研究の場合は、特に実験系の関わっている人数が多い場合は、
みんなが同じだけ貢献するというわけではない

しかし、このプロジェクトに関していうと、
データーは日本語だが、ここまでの貢献度はほぼ二人同じだ。

その研究のために必要な文献は二人とも読んだ
今現在まだ論文5本、宿題に出されているものがあるが)
一人で研究する時のプロセス全部を二人でやった感じだ。
当然彼女は研究経験が長いプロで、彼女から学ぶことも非常に多い。

データーに関しても、彼女がいろいろ質問してくれることで、
理解が深まった点が多く妥協を許さない彼女がいなかったら、
そこまでは追及しなかったというものまで追求し理解を深めた。

学生だった頃に、一緒に研究する話が出たときに、
彼女に、あなたと同じだけの仕事を私も担うから
と言われたのをまだ覚えているが、まさにその通りだった

そして、彼女に、ここまで集めたデーターをもとにフィールドワークを発表する
セミナーが9月19日にあるから、そこで発表したらどうだと言われた。
次のステージにすすんだわけだ。
日本語のデーターなのだから、当然レイが発表するようにと。
その準備と発表の話こちらの記事に。

日本では、すっかり、研究者としての自信を失ってしまっていた私だが、
マリアと一緒にやることで、自分の才能をあらためて自覚でき
自分、結構いけてるかもと思えるほどだった。

マリアとの相性がいいのもそうだし、研究における方向性や価値観が
一緒なのも楽しかった理由だろう。何と言っても彼女に育てられた学生なので、
当然、彼女に感化はされている。関係性も所詮は先生と学生なのだが、
それがお互い心地いいのだと思う。

実は、私は才能がないというわけでもなく、学者に向いてないわけでもなく、
ただ人と研究することで輝けるタイプだったのだ。
まあ、いわゆる、褒められて伸びるタイプでもある。

学者にもいろいろなタイプや、さまざまな才能の持ち主がいる。
それぞれが、その自分の才能や強みを活かせばいい。今まで一人でいる時に、
研究がすすまない自分に対して自己嫌悪に陥ったり罪悪感を感じたりして、
慢性的なストレスを抱え体調さえイマイチよくなかった。

でも、今回のサバティカルで自分を知り、自分は、人と一緒にやることで
力が発揮できるタイプの学者なのだ自分を認めて受け入れることができ、
慢性的ストレスから少し解放された気がする。

それが、今回のサバティカルの何よりの収穫だと思う。

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